♡祐雫の初恋♡

「子どもの頃、よくここに上って、

 天下を取った気分になって過ごしました」

 慶志朗は、爽快な笑顔を青空へ向ける。


 祐雫は、慶志朗を見上げて、その背後の太陽と同じ眩しさを感じる。

 慶志朗は、祐雫にとって、太陽そのものに感じられた。


「まぁ、天下取りでございますか」 

 祐雫は、見晴らし台の手擦りに掴まって、涼風に身を任せる。


 夏の暑さが治まり、黒髪とワンピースの裾が風に靡いて、

 青空を飛んでいる気分を味わう。


 それと同時に、慶志朗が天下取りの気分を味わったという

 その少年時代を理解できる気持ちになっていた。

< 181 / 201 >

この作品をシェア

pagetop