♡祐雫の初恋♡


 通り雨が去って、

 硝子を通して、眩しい陽射しが射し込んで、二人を照らした。




 慶志朗は、静かに祐雫を離す。




「家の中にいるのに祐雫さんは、雨に打たれたようですね」


 慶志朗は、優しいまなざしを向け、

 突然の口づけに驚いて、感動の涙を零す祐雫の頬を指で拭う。



 祐雫は、瞬きをして、涙の輪が広がる視界の中の慶志朗を見上げた。


 頭の中が、真っ白ではなく……

 淡い桜色に染まり、何も言葉が出てこない。





「祐雫さん、ここから見る石庭が一番美しいのです。

 嵩愿家の家紋の形が描かれているのが分かるでしょう」


 慶志朗は、何事もなかったかのように、

 石庭の話題に切り替えた。



 祐雫は、夢見心地のまま、慶志朗の左腕に寄り添っていた。


< 188 / 201 >

この作品をシェア

pagetop