奏でる場所~SecretMelody~
「ごめん…宙…。俺…いままで…気付かなくて。」



「謝ら…無いで…?大…事な、試合…前に…迷惑か…けて…ごめん…ね?」



「迷惑なんて、思ってねーよ。…ごめん、皆…宙と2人きりにしてくれないか?」



拓斗の言葉に皆は縦に頷き病室を出ていった。



「拓…斗…。黙ってて…ごめん…なさい。」



「大丈夫。心配かけたくなかったんだよな…。ごめんな…気付いてやれなくて。」



そう言って静かに涙を流した。



やっぱり拓斗は優しい人。



あたしなんかを大事に想ってくれる、唯一の人。



誰よりもまっすぐで一生懸命。



「う…うぅ…。ごめん、ごめんな…俺のせいで…っ!」



あたしは知ってる。



拓斗は誰よりも一番努力している。



みんなは“天才”って言って羨むけれど、本当は違う。



言ってみれば、拓斗は“努力の天才”。



よく言ってたなぁ。



「努力は必ず報われる。その言葉を俺の人生を持って証明してみせるよ」



って。



だから…



だから、心配をかけたくなかった。



あたしのせいで今まで積み重ねて来た努力を…崩したくなかった。



「ううん。拓斗のせいじゃないよ…?」



「でも、宙がいじめられたのは…俺と付き合ってるからだろ…?」



それは…事実だけど…。



「――宙…。別れようか?」



え…?



何…言ってるの…?



「ちょっと待って…?何で…?そんなの嫌だよっ…。」



「俺だって嫌だよ…。でも、宙が苦しむ姿はもう見たくない…。」



「大丈…夫…。あたし、笑うから。拓斗にふさわしい彼女になるから…。だから…別れるなんて言わないで…?」



「でも…」



「じゃあ、約束しよう。」



「え…?約束??」



「あたしのために…勝ってきて…?明日の試合、負けないで…っ!」



「でも、宙が心配…。」



「あのね、拓斗。“反省”は未来につながるけど“後悔”は過去に縛られるだけだよ?だからさ…?」



「…そうだな…。絶対勝つから…待ってて…。」



「うん。信じて、待ってる。」



今は調度4時ぐらい。



急いで帰れば練習に間に合うはず。



「拓斗…。はやく帰って、練習に参加して。」



「え…宙…でも…。」



「いいから、早く。あたしは、大丈夫だから。明日、勝ってくれるんでしょう?」



「……分かった。行ってくる。」



拓斗はあたしの頬にキスをして、走って行った。



…あーぁ。



酸素マスクがなかったらキス出来たのにな。



まぁ、久しぶりに拓斗が弱音吐くのを見たからいっか!




ありがとうね、拓斗。




そして、ごめんね…




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あのあと、ハルくん達と少し話してから、あたしの検査のために今日は帰ってもらった。



明日の拓斗の試合は、ハルくんと奏がムービーを取ってくれるらしい。



さっすがハルくん達。



あたしの気持ち、まる分かりじゃん。w



あたしは検査を終えるとすぐに、眠りについた。



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