奏でる場所~SecretMelody~
ガチャ――


「こんばんはー…」



…さすがにおらんかな…?



今日はピアノの音も聞こえず、ただ、水のちょろちょろ流れる音だけが室内に響き渡る。



「あ…昨日の方…ですか?」



…!?



おったん?



影も形も見えへんで?



俺は一生懸命に目を凝らし、部屋の隅々まで見渡した。



すると、バイオリンのケースがある辺りに人影が見える。



バイオリンを持ってる?



ひけるんかな?



「あ…はい!!」



「お待ちしておりましたよー」



ふと、人影が動きだし、見慣れたピアノの椅子に座る。




「すみません…。



もしかして、バイオリンもひけるのですか?」



「あ…うん…。元はコッチが主だったから。」



へ?



ピアノじゃなくて、バイオリンが?



「あ…、そういえば、今日私の過去の話をお話する予定でしたよね?



この話、人に喋ったことが無いんですけど…」



え?そんな話を俺に聞かせてくれるん?



顔も名前も知らんのに…笑



「本当ですか?


もし、言いたくないとかだったら、全然無理してくれなくていいですよ?」



確かに、気になるけど。



「いえッ、ただ話す必要がなかったから誰にも話していないだけで。



特に話してはいけない理由など無いんで!!



あの…、ちょっと長くなっても大丈夫ですか?」



「え?あ、はい!!」



急に、話始まるねんな。



なんか、面白い人や。



俺が返事すると、その人は息を吐き、ゆっくりと話しだした。





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