きみに会える場所~空の上ホテル~
レイはぐっと唇をかみしめていたが、やがて一息に言った。

「おれ、コックの仕事、今日でやめる」

「はあ?!」
「ええっ!!」

サキさんと私は同時に叫んだ。

「やめるって、どういうこと? フロントの仕事と代わりたいってこと?」

サキさんの問いかけにレイは首を振った。

「いや、違う。フロントもやらない」

サキさんは呆れ顔で言った。

「あんた何勝手なこと言ってんの? コックも嫌、フロントも嫌って、どうするつもりなの」

レイは答えない。

「・・・・・・まさか、支配人やりたいって言うんじゃないでしょうね。カナタがいないからって無茶言わないでよ」

レイは無言で首を振ると、突然私をじっと見つめた。

な、何、そのすがるようなまなざしは・・・・・・。いつものレイとなんか違う。

あ、ダメ。ドキドキしてきた。し、鎮まれ、心臓。

レイは私を見つめたままで言った。

「お前の仕事、おれにやらせてくれないか」

えっ?

私はすっかり戸惑って、サキさんをちらりと見た。

サキさんは、唇に手をあてて考え込んでいた。

「レイ。ここで働く以上、お客様の選り好みはできないのよ」

レイは答えない。

サキさんは肩をすくめた。

「全く。言い出したら聞かないんだから。美緒ちゃん、どうする?」



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