あの子





「つっかれた~」

「……」

「ん?何考えてんだよ、ケンタロー」

「んぁ?ああ、すまん」

「一軍入れたんだから、もうちょい喜べっつーの!!」

「いてっ」


チームメイトは、自分のスポーツバッグを俺の頭に落下させてきた。


「……いってーんだよっバカキヨシ!!!!」


一旦、思考回路を止めてキヨシにやり返す。

俺たちは、もう3年なのに。


全国目指すクラブに入って、ようやく一軍入りだ。


「…足は?」


キヨシの低い声が、俺の足に絡みつく。


「すっかり元気だよ。やっと一緒にプレーできるな」

「あぁ…」



高1の春、自転車に乗った俺は、トラックと事故った。

右足を痛め、2年間退屈な日々を送っていた。


そして、ようやく完治して。


全国大会出場メンバーを決めるテストで、一軍になった。

長かったなー、うん。







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