佐藤君と鈴木君
第二話 音楽の時間
 音楽の授業というのは、なぜいつも昼食後にしかないのだろうと、俺は思うわけですよ。
 音楽の授業というのは、なぜこうもカッタルイものなのだろうと、俺は思うわけですよ。
「それは僕も同感ですよサトーせんせ」
「あれま、優等生の鈴木君もそう思いますか?」
「~♪」
 教科書に載っている歌を、ダサいやら歌いにくいやらなんだかんだと文句をつけながらもノリノリで歌う女子どものでっかい声のお陰で、ずいぶんお歳を召した音楽教師の耳にはこそこそと話す俺らの声は聞こえていない。グッジョブだ女子!
 隣の席の鈴木は興味無さそうに、配布された楽譜の並ぶプリントを折って紙飛行機にしている。成績はクラストップのくせになんてことしてるのこいつ。
「歌なんか歌えんでも、生きてけるのになあ」
 なんのための授業なん。面倒くさいなあと呟いて、奴はあろうことか元楽譜の紙飛行機を窓の外に放り出してしまった。
 優等生のすることとは思えません。駄菓子菓子(死語?)、さすが優等生。もう一枚余分に取っていたらしく、奴の机の上にはちゃんと五線の印刷されたプリントが置かれていた。
「鈴木君は抜かりないねぇ」
「せやろ」
 ニイッと悪い顔で笑った奴に、同じような笑みを返した。

 へったくそな女子たちの歌は、まだ終わらない。

2008.04.21
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