俺様社長は左手で愛を囁く

冬美side

「園田先輩」

・・・先輩じゃないのは分かってる。

それなのに、

私の口から、先輩の名を

呟いていた。

・・・

「園田先輩?」

私を見つめ、その人が囁く。

私はハッとし、

咄嗟に謝った。


「ごめんなさい、人違いです」

「・・・いいえ。

それより、お怪我は?」


「大丈夫です、何ともありません」

私はそう言って首を振った。

そして、もう一度、その人の顔を見つめる。

・・・

「私、近藤コーポレーションの、

近藤秀明と言います・・・

貴女、確か、神宮寺社長の」

・・・

私は無言のまま頷いた。

あの日の晩会ったのは、

この人だったんだ。

外回りから帰ってきていた私は、

鞄の中から、あのハンカチを取りだし、

秀明に渡した。
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