澄んだ空の下で
「え、なに?若菜ちゃん、ここで働くの?」
「いえ、そんなんじゃないですけどね」
「そうなの?残念。これから会えると思ったのに」
「そう言って頂けると嬉しいです」
他愛ない会話がダラダラと続いた。
ただ喋るだけ。
そして相手を楽しませたらいいだけ。
暫くの時間が過ぎ、あたしはコロコロと席移動をし、懐かしく覚えている顔ぶれが何人か居た。
だから、良かった。
ここでこうやって自分を消し去る瞬間。
嫌な事も、何もかも忘れてた。
一人で居るより、今はこの場所のほうが良かったって、そう少なくとも思った。
だけど。
「…若菜ちゃん、ごめんね。7番テーブルのお客さん、若菜ちゃんがいいって言ってんの」
「7番ですか」
「そう。…あぁ、大丈夫とは思うけど、慎重にね」
「あ、はい」
耳元で麗美さんが言うのだから少し緊張してしまった。
だからとは言え、嫌とは決して言えない事。
席を外して目的のテーブルに向かった時、見える先の人物に身体が硬直した。
…なんで?