澄んだ空の下で
優しさの嘘

8月に入って初めの火曜日。

セナさんが恭を連れてやってくると言うその日。


あたしは鏡越しで、綺麗に髪をアップしてくれる麗美さんを見つめた。


「…あの麗美さん?」

「うん?」

「やっぱりあたし…」


辞めたいです。

って言葉が口から出ず言葉を紡ぐ。


「とりあえずセナの言う事聞いてみようよ」

「……」

「アイツはね、あたしがここで働いてた時の初めての客なの」

「えっ、そうなんですか?」

「うん。もー、ほんと色んな話し聞いてもらったよ。丁度セナもさホストなり立ての頃でさ、もーお互い愚痴りまくりよ」


アハハと笑う麗美さんは懐かしそうに語りだす。


「だから今では大切な人なの。でもセナと椎葉くんが仲良しだって事を知ったのは今年に入ってから」

「……」

「正直驚いたな。名前はちらほら聞いた事あったし、いい噂なんてなかったからね。セナのツレとはいえ、あたしより歳下なのに正直ビビってたもん」

「……」

「なのに若菜ちゃんと知り合いだし、ほんとにビックリで。繋がりって凄いんだなって改めて思った」

「……」

「今日はセナの言う通りにしとけばいいよ。あたしは他の席に回るから、他誰かヘルプで若菜ちゃんの席につけさせるね」

「はい」

「よし!!出来た!若菜ちゃん、ちょー可愛いじゃん」


肩をポンと叩かれて麗美さんはニコっと微笑んだ。
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