澄んだ空の下で

「お前、マジ歩くの早ぇー…」

「……」

「すげぇ探しただろ」


もう一度たどり着いたその部屋で、恭は顔を顰めたままソファーに座り込む。

呼吸を整えようとする恭は、俯いたまま頭を抱えた。


「何で、探しに来たのよ」

「あんなまま帰す訳にもいかねーだろ」

「……」


フッと息を切らした恭は顔を上げたかと思うと、あたしの腕を引っ張る。

その所為でグランと揺れたあたしの身体は一気に恭の隣で腰を下ろしてた。


「別に俺、若菜の事、引き離すつもりで言ったんじゃねーから」

「……」

「でも、さっき言った通り。若菜とはそー言う関係になりたくねぇから」

「そー言う関係って?」

「付き合うとか、そー言うの」


ハッキリ恭の口から聞くと、物凄く切なくて、苦しかった。

だったら、ここまで連れ戻さなくてもいいじゃん。

そんな事、聞きたくもないよ。


「じゃあ、なんでここに連れて来たの?」

「そんな事、わかんねーよ」

「え、何それ…」

「分かんねーけど気づいたら若菜探してた」

「……」

「で、気づいたらココに着いてた」

「恭はいつも勝手だよ、」

「…何が?」

「中途半端に優しくしないでよ」

「別にそんなつもりねーけど」

「恭はそう思ってても、あたしは違う。…じゃあ何でキスなんかすんの?」

「……」

「恭は誰とでも出来ちゃうかもだけど、あたしにとったら特別なんだよ」


だから簡単にしないでよ。

…簡単に。




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