ウェスターフィールド子爵の憂鬱な聖夜

 この自分、名もなきローズマリー・レスターが、ウェスターフィールド子爵と結婚できると信じていたなんて……。

 本当になんて愚かで思い上がっていたんだろう。

 ローズはすっかり打ちひしがれて、逆に大声で狂ったように笑いだしたくなったほどだ。

 だが喉から出てきたのは、自分の声とも思われないうめき声だけだった。

 部屋に戻るとローズはいそいでつけていたドレスを脱ぎ、宝石類を元どおり箱に片づけた。

 髪を下ろしいつもの服に着替え、すべてきちんとしてしまうと、ベッドに腰を下ろしこれからどうするべきか思い悩み始める。


 エヴァンとは別れるしかない……。


 そう考えただけで、胸が切り裂かれるように痛み、涙が止めどなく流れてくる。

 だがこうなったら、彼ももはや自分のことなど望みはしないだろう。


 はじめて見たレディ・アンナは、咲き誇る真紅の薔薇のようだった。

 身分、富、美貌、すべてにあまりにも恵まれた女性。あの人と自分など、まったく比較の対象にもならない。
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