ウェスターフィールド子爵の憂鬱な聖夜

 彼は馬鹿なことを、と笑い飛ばそうとした。自分の気持ちはそんなに軽々しいものではないと、分からせてやりたかった。

 だが、今の言葉の中にそれだけではすまされない、もう一つの問題が顔を覗かせていることに気づくと、どう言えばいいのかわからなくなってしまう。

 それは互いの育ちの違いに由来することで、取ってつけた礼儀作法や社交辞令でかわせるものではなさそうだった。

 ローズの純粋さと聡明さを――まさにそれが彼女をこれほど愛するようになった大きな要因だったが――彼は初めて恨めしく思った。

 他の女なら、欲得ずくの虚栄心の強い愚かな女達なら、貴族の仲間入りができるこんな素晴らしい玉の輿、あっという間に有頂天になるだろうに。

 潤んだ茶色の瞳が、まっすぐ見つめていた。

 何か言わなければ。このままでは、また彼女を失ってしまうのではないか。

 エヴァンは再び顔を覗かせ始めた恐れに心臓をつかまれるのを感じ、強硬な態度に出た。
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