ウェスターフィールド子爵の憂鬱な聖夜

 静かにサロンを辞した後も、頭の中で今の話がぐるぐると渦巻いていた。

 自室でぼんやり座っていたが、ふとあることを思い出して居ても立ってもいられなくなった。小走りに女主人の部屋に行くとノックする。


「ミス・レスター、真っ青じゃないの。どうしたの?」

 ローズは礼儀も忘れ、いきなりエルマー夫人に問いかけた。

「奥様、奥様も何かご存じなのでしょうか。ウェスターフィールド子爵様のことで」 

「何かと思ったら、そのこと」

 夫人は優しく微笑んで言った。

「口止めされていましたけどね。あなたを雇う時に推薦してくださったのは、エヴァンなの。あなたに差しあげたドレスも、実はあの方からのお差し入れよ。いつもお会いすると、決まってあなたのことを聞かれているわ。とても気にかけていらっしゃるのは、すぐわかりましたよ。あら、真っ青よ。気分でもお悪いの?」

「いいえ、何でもありません。大変失礼いたしました」
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