ウェスターフィールド子爵の憂鬱な聖夜
たちまち、心臓が激しい音を立てはじめた。
エヴァンが? 何かしら?
もう会えないとあきらめていたが、その実、心の底から会いたくてたまらなかった。
もう何も期待してはいけない、彼のことはきっぱり忘れなければならないのだから、と、どんなに強く思おうとしても、このメッセージを見ただけで胸が震えるのはどうすることもできない。
せめてこの人に、彼への感謝の気持ちを言付けることくらいは許されないだろうか?
結局、四時前になると簡単な外出用の服装に着替え、エルマー邸を抜け出してしまった。
約束の時間に指定された番地に着くと、横から片眼鏡を付けた初老の紳士が、いきなり声をかけてきた。
「あなたが、ミス・ローズマリー・レスターですかな?」
「はい、わたしです……。あのエヴァン……、いえ、ウェスターフィールド子爵様から何かご伝言が?」