僕の可愛いお姫様
どうすればいいのか解らない、というのが正直な感情だった。




梅雨李を初めて見つけた、高校の入学式。
進学した高校に、同じ中学からの友人は一人も居なかった。

ガラにもなく緊張していた。
普段から「無愛想」だの、よくて「寡黙」だと称される性格に、自分自身納得していたわけじゃない。

それでもそれが直せないのは、それが根本的な性格だからだろう。
それでも知り合いが一人も居ない新しい場所、というのは、俺を酷く緊張させた。

入学式の前に、体育館に貼られたクラス分けのボードでクラスを確認して、教室に入る。

教室のドアを開けてグルリと見渡して、自分の名前のネームプレートが乗った机を探す。
その机を見つけて近付いた時に、隣の席で話をする女子が二人、目についた。

その時だ。




「『ミズホ』だって。可愛い子かなぁー。可愛いよね、絶対!」

突っ立っている方の女子が、席についている方の女子に、声を潜めるでもなく言った。

「可愛い女の子じゃなくて悪かったな。」

俺はその背中に言葉を投げて、さっさと自分の席についた。




「瑞穂」。その名前で誤解を受けた事は何度もある。
慣れていた。慣れていた筈だったのに…。
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