AKANE -もう一度、逢いたい-


息を切らして舞台裏に着く。


もうステージを終えた2人は少し疲れたみたいだった。


黄色いワンピース姿の彼女は1人の男の後ろについて行く。


俺の方には全く見ようとしない。


だから俺はその後を追った。

そして呼びかけた。


「…その子、
離してくれない?」


茜の腕を引っ張る。


2人がパっと振り返った。


男はよく知っている人物だった。


「なんでお前が…」

「久しぶりだな」

「久しぶりじゃないだろ…」


そう言いながら裕人は俺から茜を取り上げて、肩に腕を回した。


「なんで、
どういうことだよ!?」


目の前にある状況が分からない。


「なんとか言ってくれよ!」

「見える事が真実だ」


裕人はただそれだけを言う。


「お前は黙ってろ!
俺は本人に聞きたいんだ!!」

「………」


それでも何も言わない茜。


裕人の元から逃げようともしない茜。


それが意味するのはどういうことなんだ。


頭の中で嫌な警鐘が鳴り響いていた。

< 109 / 311 >

この作品をシェア

pagetop