◇桜ものがたり◇

 初めて会ったのは、図書館。

 姫は、一番高い書架に背伸びして本を引き出していた。
 
 その横顔の聡明で美しかったこと。

 一目で恋をした。


 次に会ったのは、銀杏亭の昼食会。

 女学生の中で一際可憐で目を惹いた。

 それでいて慎ましく側に居るだけでしあわせな気分にしてくれた。

 
 新緑の美術館では、

 陽だまりに白いワンピースで佇む姫は、長い髪がそよ風に揺らめいて、

 きらきらと輝いていた。

『柾彦さま』と澄んだ瞳で見上げられて、

 名前を呼ばれる度、姫の美しさに、言葉を忘れて見惚れていた。


 真珠晩餐会では、

 榛文彌の非礼な言動に遭いながらも、毅然とした態度を保っていた姫。

 怖くて震えながらも、決して自分には、涙を見せなかった強き姫。

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