S彼
いっちゃんにそう言うと、決まって『茜はどこまでお人好しなのよ?!』って言われちゃうんだけど。
「ねぇ、茜。親に東京に行くことは認めてもらわなきゃなんないのは当たり前だけど、付き合ってることを誰にも言うなっていうのはちょっと酷いんじゃないかな」
「…そうなのかな。。。」
アタシはアイスレモンティをストローでくるくる掻き混ぜながら答える。
「だってさ。掛井くんに『陰の女になれ』って言われてるようなモンじゃん!!」
陰の女……か───。
「んー。しょうがないよ。だって、タクはモデルになるんだもん。知られちゃマズイことだってあるでしょ?」
私は能天気にもそんな風に答えると。いっちゃんはハァ…と深いため息をついた。
「そうだけどさぁ…。それってなんかズルくない??だって、陰になったら光は浴びられないんだよ?掛井くんは光浴び続けて、オンナノコにモテまくってさ。涼しい顔して『彼女居ないから、君がオレの彼女になってくれる?』なんて、夜な夜な色んな女の子のところを渡り歩く可能性だってあるんだよ?そうなったら辛い思いするのは茜なんだからね?!そういうのわかってる??」
「うーん…。うん。そうだね」
気の抜けた答えに拍子抜けしたのか、いっちゃんは口をあんぐりと開けていた。
「タクの2番目とかって…。昔からよくあったから。あんまり気にしてないの。最終的に私に戻ってくれればそれでいいから…」