貴方は知らない人だけど【TABOO】
貴方は知らない人だけど
 仕事帰りに友達からの着信。出ると、後ろでは楽しそうな声。

「久しぶり!ねー春菜(はるな)、時間空いてたら飲みに来ない?」

彼女が言うには、大学時代の友達との飲み会で私の話になり電話してきたのだそうだ。

場所も近いみたいだし、明日は土曜日だからいいか。

そう思って、私は行くと返事した。



「千晶(ちあき)、お待たせ」

「皆待ってるよ!」

店外まで迎えに出てくれた友達の後を追い、席へ向かう。

「おー、ハルナン久しぶり!」

私のあだ名を呼びながら皆が歓迎してくれた。

誰も彼もが懐かしい面々で、来て良かったなと嬉しくなった。



「春菜さんおかわり頼む?ついでに言うよ」

不意に真横から聞き覚えのない声がして、私は内心驚きながら隣を見る。

「あーえっと、じゃあお願い」

「了解。すいません生二つー!」

隣に座る彼は気軽な様子で注文をした。けれどどうしても思い出せない。この人、誰だっけ?

「はい、来たよ」

考えあぐねていると、彼にビールを差し出される。私は曖昧に返事をしながら受け取った。

「・・・もしかして、僕の事覚えてない?」

図星をつかれ、思わずむせる。

「―――なんてね、実は初対面だよ」

続けて言われた言葉にめまいがした。
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