ポケットに婚約指輪
忘れさせて 

魔法をかけて


 郊外のアウトレットモールでまず最初に入ったのは、リーズナブルなお値段が人気のブランドショップだ。


「ここ女性モノですよ?」

「うん。そうだよ。……あ、すみません」


里中さんは、すぐに店員を見つけると呼び出した。


「彼女に似合いそうな服を選んでもらえないかな。色は一箇所淡いグリーンを入れて。それ以外はお任せで」

「はい。かしこまりましたー」


ショップ店員は私を上から下まで見てチェックすると、「少々お待ちくださいね」と店内から服を選びに行った。


「さ、里中さん」

「昔こんな映画あったよね。極貧の女性をセレブ風に変身させたりさ。俺もちょっとやってみたかった」


そういって片目をつぶる。

「あのでも、私そんなにお金に余裕が」

「そういうのは気にしなくていいの。君は俺に借りがあるんでしょ? 今日は大人しく言う事聞いてもらうからね」

「……でも」

「お待たせしましたー!」


元気のいい店員さんが、かごにたくさん服を持ってきたかと思うと、私は試着室に連れて行かれた。

まるで着せ替え人形にでもなったかのように、次々渡される服を試着していく。


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