ポケットに婚約指輪


「流されてしまえれば良かったのに」


だけど。
彼は酔った女の子に手は出さないだろう。

それもなんとなく想像がついた。

優しいけれど、心を許してくれてるわけじゃない。
あの人の心の中で、今も存在感を放っているのは指輪の彼女だ。


「恋に、……落ちたかったのに」


舞波さんを忘れられるなら、何でも良かったのに。

そう思ってしまう時点で、私は舞波さんを忘れていない。
彼といるとそういうことにも気づいてしまう。


不思議な人だ。

でも確かにリハビリになるのかもしれないと思う。
こうして自分を知ることは決して悪いことじゃないと思えた。

少なくとも、皆に素通りされて空気になりそうになるよりは。
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