ポケットに婚約指輪

彼の帰国



【とても良い映画でした。一緒に観れて嬉しかったです】

【今度はドライブでも行こうか。空気の良いところでのびのびするのもたまにどう?】


デートと呼んで良いのなら、里中さんとのデートの夜、二人で交わしたメール。
まるで本当の恋人同士のようだと、心が躍るのは私。



 幸せ気分のまま眠りに付いたその深夜、メール着信音に起こされる。


【久しぶりの日本は良いね。会えるのを楽しみにしています】


ふわふわした雲の上から、一気に引き摺り下ろされたような感覚。

舞波さんからのメールだ。
心臓がドクドクと騒がしくて、体にどんどん重みが加わる気がする。

どうしてこんなにメールをよこすの。
私のこと、捨てたくせに。
何で今更。こんな風に揺さぶってくるの。


「結婚したくせに……」


自然に奥歯をかみ締めている自分がいる。

舞波さんのことはもう考えたくない。
振り回されるのはたくさんだ。

そう思うのに、記憶が私の神経を刺す。

私は彼のことをどう思ってるの?
自分の気持ちなのに、分からないことが多すぎる。
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