いつか君に届け
双子の入学式
久しぶりの実家だな。またここで暮らす事になるとはね。二度とないと思っていたよ。すいません。またお世話になります。

『慶太郎兄ちゃん!お洋服どれ着るの?』

『え?服?えっとー入学式だからブレザーないの?お義母さん準備てしてたでしょ?あっ!あった!クローゼットにかかってるじゃん。龍!これを着て!虎!はい!お前はこっち?』

『違う!そっちは龍のだよ!僕こっち!』

『あーそう。はい。じゃあ着て下さい』

『慶太郎兄ちゃん!これできないよ!』

『はいはい。サスペンダーは出来ないか。はい。いいよ。虎は?出来るの?お前!ボタンがズレてる!1つずつズレてるよ。はい。もう一回やってごらん』

『もういやー!出来ない!やってよー!』

『なんで?もう今日から1年生だよ。ボタンぐらい出来るでしょ。あーもう時間なくなるよ!虎!早く!おいで!やってあげるから』

『ランドセル持っていくの?』

『持っていくよ。学校行くんだから背負っていくに決まってるでしょ。はい。行こうか』

『うん!僕かっこいい?』

『うん。かっこいいね。龍も虎も似合ってるよ。写真撮ろうね。悠!お前もおいで!写真撮るから玄関の前に出て!』

『え?俺も?』

『だってお前は行かないんだろ。記念だからとりあえず全員で撮ろう。学校の前でも撮るんだけど。慎二郎!準備出来たか?』

『ちゃっと!兄貴!ネクタイどうやるんだっけ?忘れちゃったよ。大学の入学式以来だから。やってよ!』

『はあ?お前もかよ!18歳だろ!よし。はい!全員外出て!』

『慶太郎兄ちゃん!靴はどれ履くの?』

『え?靴はローファーだろ。どこだ?あっ!あった。新しいの買ってあるじゃん。はい!龍!虎!履いて!』

『慶兄!俺だけ普通に普段着なんだけど』

『いいじゃん!お前は式に出ないんだろ。とりあえず並んで!撮るよ!』

お義母さん!今日は双子の龍之助と虎之助の入学式です。ランドセルが大きくて後ろから見たらランドセルが歩いているような感じです。1年生ってこんなに小さかったっけ。かわいいでしょ。お義母さん見てますか?俺と慎二郎で龍と虎の入学式に行ってきます。クラスが別々なんでネクタイもままならない慎二郎じゃ頼りないっすけど交代で龍と虎のクラスを見てきます。龍之助が1年2組で虎之助が1年1組です。悠之心は5年生になりますね。お義母さんの葬儀が終わって俺が倒れたからか?俺の影響なのか?悠之心は気づいたら僕から俺に変わってました。あいつなりに強くなり弟達を守っていかなければって様子が伺えます。それにしても龍と虎は毎日服を自分で選べないみたいですけどお義母さんがやってあげていたんですか?虎なんかすぐ出来ないって言いますよ。かわいいっすもんね。お義母さん!甘やかしてたんでしょ?俺も甘やかしてしまいそうです。でもダメですよね。俺は壮ちゃんになんでも自分の事は自分でやりなさいって躾られました。家政婦を頼もうかなと思ってるんですけど俺みたいになられたら困りますよね。しばらく考えてみます。

『はい!龍!虎!こっち向いて!カメラの方見ててよ!』

『兄貴!俺が撮るから龍、虎と写ってやってよ!記念でしょ!』

『あーそうだな。虎!どこ見てんの!カメラ見てて!』

壮ちゃん!双子の入学式です。俺が通った小学校に双子の弟達も通うようになります。俺は小学校にいい思い出はなくつまらない小学校生活を送り卒業式も出ませんでしたね。龍と虎には楽しい小学校生活を送ってもらいたいです。壮ちゃんが俺の中学の入学式で写真を撮ってくれたように俺も龍と虎の入学式の写真を撮りました。なんだかちょっとだけ壮ちゃんの気持ちがわかったような気がします。こいつらの成長の記録をこれから残してやりたいと思いました。壮ちゃんが俺にしてくれていたように。入学式の空は青空が広がり壮ちゃんとお義母さんが見てくれている気がしました。そして小学校の桜も美しかったです。龍之助!虎之助!小学校入学おめでとう!

『はい!じゃあお名前を呼ばれた人は大きな声で返事をしてください!』

お義母さん!うちの子は返事ぐらい出来ますよね?俺かなり浮いてるような気がします。だってまだ俺21歳ですよ。若いパパだと思われてるんですかね?

『高見虎之助くん!』

『はーい!』

『あっ!兄貴!』

『龍はちゃんと返事した?』

『まだ呼ばれてないよ』

『高見龍之助くん!』

『はーい!』

『出来た。良かった』

『そりゃ返事ぐらい出来るでしょ』

お義母さん!龍と虎は元気に大きな声で返事をし笑顔でしたよ。俺はあんな元気に返事などせず笑顔もありませんでした。入学式の写真もありません。だって家政婦のおばさんが学校に連れて来てくれて簡単な手続きを済ましただけですから。自分の仕事以外を押し付けられたような感じでなんだかとてもめんどくさそうでちょっと怒っているような感じでした。契約にない仕事を押し付けられたんですからね。俺は誰にも迷惑をかけないようにしないといけないとチビなりに気を遣っていました。壮ちゃん!俺これからあいつらに愛情を届けられるのかまったく自信ないけど頑張ってみます。あいつらの笑顔を守りたいです。失わせる事をしたくありません。
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