月夜の翡翠と貴方【番外集】


カップを置いて、彼女の顔を見た。

『…それは…』

『彼女は何があっても自分を好きでいてくれるって思うなら、そんな心配は無用じゃない?結局、信じてないってことでしょう?』

俺が言葉に詰まると、ミラゼは意味深に微笑んだ。

カウンター越しに俺の正面に立って、じっとこちらを見つめる。

…ミラゼの瞳はいつ見ても、透き通っていて、吸い込まれるような魅力があって。

けれど、何も見えない、濁っているようにも見えて。

幼いときから知っているその瞳に誘われて、俺は裏の世界に足を踏み入れてしまったのだけれど。


ミラゼの薄く紅を塗った唇が、静かに開く。

俺も、まっすぐに見つめ返していた。


『…相手に信じてもらえない相棒ほど、苦しいものはないのよ』


何も言えない俺を、ミラゼは強く見つめていた。

『この世界においての相棒っていうのは、命を預けあってるってことよ。唯一無二、互いだけが信じられる存在』

…唯一、無二。

ジェイドは俺だけを信じ、俺もジェイドだけを信じる。



< 223 / 455 >

この作品をシェア

pagetop