月夜の翡翠と貴方【番外集】


…先に私に刺されたふたりは、出血がひどくもう動ける状態ではない。

それをわかっているのか、男は悔しそうに顔を歪めた。

「…くそ…!こんなの聞いてねえぞ…!」

ルトは私をちらりと見ると、ふ、と明るい笑みを見せた。


「…強く咲いたからな、俺の翡翠葛は」


…強く、強く。

彼と一緒に、碧は美しく咲き誇る。





強盗達を役人に引き渡し、全ての処理が終わった、朝。


一応、蹴られたところをノワードに診てもらうことになった。

しかし、服を上げて晒した私の右腹を見たセルシアが、悲鳴を上げた。

「きゃあああ!あ、あおっ、青くなってますわよ!ジェイドさん!痛そう!痛そう〜!!」

何故かセルシアが涙目になっている。

…相手も、渾身の力を込めて蹴ってきたのだ。

それなりに痛みはあったし、仕方ないだろう。


「…痛みますか?どうするのが良いのでしょうかな」


ふむ、とノワードが青黒くなった箇所を見て、白い髭を震わせた。

ちらりと、ルトを見てみる。

彼はセルシア以上に、青ざめていた。

「…え…ルト、なんでそんな顔してるの」

「……いや…お前、そんな怪我してんなら、早く言えよ…縛るの手伝わせちゃったじゃん…」

…確かに、痛みを堪えて、強盗達を縛り上げるのは手伝ったけれど。


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