月夜の翡翠と貴方【番外集】


「こっ、この花の名前を教えて下さい!」


花束を作ってくれている女の店員が、「えっ!?」と声を上げた。

ルトも、突然の私の行動に、驚いている。

私の指差している花を確認すると、店員は「ああ」と笑った。


「『千日紅(センニチコウ)』です」


…『千日紅』。

心のなかで繰り返して、私はまたその花を見つめた。

すると店員は、「その花は、いつまでも色褪せないんですよ」と言った。


「…ですから、花言葉は『変わらない愛情を永遠に』なんです」


素敵ですよね、と彼女は目を細める。

私はしばらく、何も言えなかった。

ただただ頭のなかで、彼との日々の記憶が蘇っていく。

彼は、千日紅の咲くあの場所へいく前に、『ずっと見せたかったんだ』と言っていた。


…変わらない愛情を、…永遠に。


彼の、寂しくて優しい笑顔が、目に焼きついている。


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