月夜の翡翠と貴方【番外集】


そのまま何も言わずに、パンを頬張っていると、何故かルトは嬉しそうに笑った。

…そこで笑う意味がわからない。

ルトは、麻袋から地図を取り出す。


「一緒に決めよーよ」


明るい笑顔。

優しい声。

ジェイドは、それらに暖かな思いを抱いて、「うん」と返事をした。

ルトが、今ここにいる、と地図を指し示す。


…再び、迎えることのなかったはずの、ルトとの朝。

こちらへ向けられる笑顔も、柔らかな声も、全て。

もう、絶対に見ることはできない、と思っていたのに。


少し話をしたあと、近くの海辺の街へ行くことになった。

港がある、比較的大きな街だ。


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