月夜の翡翠と貴方【番外集】


私を救ってくれた、その笑顔を愛しているから。

ルトのために死ねるのなら、本望とさえ思うほどに。


私は心の底から、彼の笑顔が永遠であることを願っていた。







「…あんたら、ちょいといいか?」


小さな街の、夜。

暗く、人気の無い路地の壁に寄りかかり、正装姿の男が煙草を吸っていた。

苛立ちを発散するように、黒い革靴をコツコツと地面に打ち付ける。

その横にある木箱の上には、上等なシルクハットが置かれている。

周りには同じような格好をした男が数人、彼を囲うようにして立っていた。

そこへ、貧相な身なりをした男達が、声をかけた。


「……なんだ?」


煙草を吸っている男ではなく、そのすぐ横に立った男が返事をする。

まるで山賊のような外見をしている男達を、汚いものを見るような目で見ている。

声をかけた男達は、その視線を気にすることなく、ニヤッと笑った。


「お前さんら、ルト・サナウェルって男を狙ってるんだろう」


手前にいた小太りの男が言った言葉に、煙草を吸っていた男がちらりと視線を動かした。

「……それが、なんだ?」

話に食いついてきた、と言わんばかりに小太りの男はニヤリと笑うと、「俺らはなぁ」と切り出した。



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