月夜の翡翠と貴方【番外集】


レンウは私の言葉に、「そうだねえ」と意味深に笑った。


「さて、どうしようかな。船に乗ろうかな」


もともとその予定だったし、と言うレンウに、私は内心安心した。

これ以上なにか言われては、たまったものではない。

「…そうですか。お気をつけて」

精一杯に皮肉を込めてそう言うと、レンウはにっこりと笑う。


「楽しい船旅に、なるといいけどね」


…ルトはやはり、なにも言わなかった。






食事が終わり、荷物をとりに部屋へ戻る。

宿の廊下を歩くジェイドの隣に、主人である青年の姿はない。


……さて、どうやって仲直りをしようか。


食事が終わってから、私はそのことしか考えていない。

これまでに、ルトとケンカに似たものをすることは、何度かあったけれど。

大体は自然と元に戻るか、ケンカの原因自体がくだらないことだったりしたから。

…ああ、どうしたものか。


きっと私が謝っても、ルトは納得しないだろう。


私の不安や心配に、彼は怒っているのだから。


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