月夜の翡翠と貴方【番外集】

しないならしないで、私は構わない。

けれど、彼に我慢させているなら、と思ったのだが…


ルトは私を静かに見つめると、「…いいの?」とつぶやいた。


「…いいの、って?」

「前に駄目って言われたから。しばらく無理かなって思ってたんだけど」


気づけば、惚けた目に見つめられていた。

色味を帯びた深緑は綺麗で、見惚れてしまう。


「……いつまでたっても、してくれないから。もう、そんな気なくなったのかと思った」


目をそらして言うと、ルトは嬉しそうに笑った。


「可愛いね。なに、ずっと待ってたの?」

「…………」

「早く言ってくれればよかったのに」


そう言って、私を見つめる。

その目は、妖艶な色を残して。


「…今日の夜、ね」


彼が、耳元で囁く。

…私の、全てを。


貴方のものにして。








「…照れてる?」



夜、宿の部屋。

私とルトは、ベッドの上にいた。


私の上にルトが覆いかぶさって、余裕そうな笑みを浮かべている。


「…別に。照れてない」

今更恥ずかしくなって、ふい、と顔を背ける。

しかし視界の端に映るルトは、笑っていた。

…だから、その笑うタイミングがよくわからないのだが。


まだ服すら脱いでいないというのに、顔が熱くなってくる。



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