副社長は溺愛御曹司
キュー出しと共に、インタビューが始まった。

こういう取材の常で、事前に広報を通して質問項目をもらってあるため、基本的には、用意しておいた返答をするのみだ。

スツールに浅く腰を下ろして、独特に響く声でコメントをするヤマトさんは、純粋にかっこいい。



(ああいう顔も、できるんだよなあ)



どうして普段は、あんな無邪気なメカ好きの水泳部員なんだろう。

その時、佐々木さんが、はっと身体を緊張させたのがわかった。



「御社は、いわゆるチャリンチャリンビジネスで成功をおさめつつありますね。これは今後どう展開させていくおつもりですか?」



私もはっとした。

予定にない、抜き打ちの質問だ。

チャリンチャリンビジネス、という言葉の選択に、ちょっとした挑発を感じる。


インタビュアーが、さあどうだという顔で見つめるのを、ヤマトさんはしばらくじっと見返して。

印象が悪くならないていどに軽く眉を上げると、それまで自然に投げ出していた脚を、スツールの上でラフに組んだ。



「あくまで柱のひとつと考え、メインコンテンツにとは考えていません」

「十分に、なり得ると思いますが。ああいった仕組み型のビジネスモデルは、成功例が少ない。御社の功績では?」

「一時的には、好むと好まざるとにかかわらず、あれが弊社の生命線になるでしょうね」

「ふむ」

「ですが、情報に課金させるビジネスは、近いうちに終わるというのが、私の考えです」



インタビュアーが、ほお、と声を漏らして目を見開いた。

< 12 / 210 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop