副社長は溺愛御曹司


「パートナー同伴?」

「CEOも、奥様をおつれになるそうです」



目を通してもらう書類を持っていった際、パーティについてヤマトさんに説明した。

スケジュールの調整に問題はなかったので、行くよ、と気軽に返事をしたヤマトさんは、同封されていた文書を見て、目を丸くした。


主催のメーカーは、世界中に現地法人を持つグローバル企業だ。

経営陣のトップも、今はアメリカ法人のCEOを兼任する、向こうの人だったはずだ。

そのためこのパーティも、欧米ルールにのっとって、パートナー同伴が推奨されていた。



「独身の場合は、どうすりゃいいんだ」

「どなたか、いらっしゃいませんか」



婚約者とまではいかなくても、恋人をつれていくくらい、この手のパーティは許される。

むしろいい機会と、奥さんがいるのに別の女性を同伴させる役員もいると聞く。



「急に言われてもなあ…」



弱った、という顔で、ヤマトさんが案内書きをにらむ。

金曜の昼間だし、相手の都合がつかないんだろうか。



「おひとりでも問題ありませんよ。若干、浮くとは思いますが」

「浮くの」

「コンパニオンを手配するという手も、あります」



知らない女の人なんて、やだよ、とヤマトさんが眉をしかめた。

ふと、思いついたように私を見あげる。



「神谷は?」

「はい?」

「秘書じゃダメなの、こういうのって」



ああ。

確かに、私たち秘書は、必要とあらばそういう場に同行することも、業務のうちだ。



「ヤマトさんさえよろしければ、お供させていただきます」

「ほんと、助かる。じゃ、頼むね」



かしこまりました、と言って、副社長室をあとにした。


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