副社長は溺愛御曹司

出張から帰ってすぐの週末。

私は祐也を呼び出した。



「やっぱり、ヤマトさんかあ」

「ごめんね、でも、ありがと」



昼間のカフェで、私はヤマトさんが好きみたいと打ち明けると、祐也が笑いながらため息をついた。



「うまくいきそうなの?」

「ううん、向こうは彼女もいるし。でもまあ、いいの、それでも」

「そっか」



優しく笑って、うなずいてくれる。

ごめんね、私の自覚が遅かったせいで、祐也に、余計な期待と失望を味わわせたかもしれない。


これで、もう二度と会うこともないのかなと思うと、ふいにさみしくなった。

15歳で出会ったから、もう10年。

いつもどこかに、祐也がいた。



「そういう顔、するなよ」

「どんな顔してる?」

「…『惜しい』?」



にやりと笑う祐也に、笑いが弾ける。

うん、そうだね、惜しいのかも。

だってなんだかんだ、いい男だもん。


私を、もう一度選んでくれたこと、本当に嬉しかった。

ほんとだよ。


でも、ヤマトさんに、好きって言った、あの瞬間。

私のほしいものは、それじゃないって、わかっちゃったの。



「なに、泣いてんの」



えっ嘘、私、泣いてる?

あきれたように祐也が、お店のナプキンで、私の頬をぐいと拭いた。

< 97 / 210 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop