Breathless Kiss〜ブレスレス・キス
Sweet &Pain Seventeen Birthday
雨の月曜日、午後2時。


ガラス張りの1階のロビーは、
いつもよりも薄暗い。


(雨は嫌い。だけど、今日のうちにたくさん降って、週末は晴れてもらわなきゃ…)


奈緒子は、受付カウンター裏のテーブルで、来訪予定客リストをぼんやり眺めながら、そんな事を考える。


雨だから、というわけではないと思うが、もう2件のキャンセルが出ていた。



「奈緒子さんてわかりやすいですね〜!なんか、いいことあったみたいですね!」


ブースの中で、高田礼香が奈緒子の方をみて、歌うように言う。


来訪客が少ないから、礼香の膝には、雑貨の通販カタログが置かれている。


さっきまでそれは奈緒子の膝の上にあった。


昔から代々受け継がれてきた習慣で、
総務課の女子社員たちは、皆、名字ではなく名前で呼び合う。


「やだあ。礼香ちゃんたら。なんにもないって!
私、なんか変だった?」


奈緒子はどきりとしてつい、赤くなってしまう。図星だった。


「変じゃないですけど、朝から嬉しそうですもん。
もしかして、彼氏出来たんじゃないですか?教えて下さいよ〜どこで知り合ったんですか?
幾つなんですか〜?」


礼香は人懐こく、奈緒子の左の二の腕をとって揺さぶるようにする。


三人姉妹の末っ子だという彼女は、
本当に甘え上手だった。


「彼なんて出来ないよー。出来たら、
とっくに自慢してるって!
それよか、私、今週の金曜の午後、用があって休みだから、よろしくね!」


礼香の追求を軽くかわしながら、胸の内は、踊り出したくなるくらい軽やかだった。



『今週の金曜の夜、
藤木尚哉と京都で逢うの』


このセリフが言えたらどんなにいいか。


昨夜8時、奈緒子が両親の店の手伝い
から帰り、風呂に入ろうと支度をしていた時、スマートフォンが鳴った。


尚哉からだった。




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