Breathless Kiss〜ブレスレス・キス


スマホでは、密かにお気に入りのお笑いタレントのブログを読んだ後、京都観光の情報を集めた。


今週はずっと、旅行のことばかり考えていて、足元がふわふわとしていた。


尚哉となら、思い出に残る素敵な時間が作れるに違いないーーー

昔、二人で遊園地に行った時のように。




それは、高校2年の秋。
ちょうど奈緒子の17歳の誕生日だった。


忘れられない幾つかの
青春の思い出の日。


10代の多感な時期のそれは
鮮烈な輝きと甘酸っぱさを持って、
人の心の中に生きる。



恵也と初めてキスを交わした日。

初めて抱かれ、泣いた日。

パープー号の後ろに乗って恵也と訪れた、肌寒い早春の砂浜。

改造車が並ぶ狂ったような夜の埠頭。


そして。

たった1日だけ、手を繋いだことすらない尚哉と一緒に過ごした日。


16歳の奈緒子は、初恋の彼氏に捨てられてしまったショックがあまりにも大きくて、2週間、自室に閉じこもり、泣いてばかりいた。


あまりにも突然訪れた恵也との別れが
辛過ぎて奈緒子は登校拒否に陥ってしまっていた。



ーー坂本…よみうりランド行こうぜ。
ジェットコースター乗ろう。
きっと少しは気が晴れるよ。



尚哉は、いきなり電話をかけてきて、
そう言った。


そんな簡単じゃない、と奈緒子は言いたかったけれど、奈緒子自身も心のどこかで誰かの救いの手を求めていたのかもしれない。


尚哉は、奈緒子がどれだけ恵也にのめりこんでいたか知ってる。


尚哉なら、この辛さ、悲しみを共有してくれる。

そんな気がして誘いに乗った。



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