Garnet~大好きの伝え方
僕が加奈を強奪したら、絶対、追いかけてくると思っていた。

むしろ、それを狙ってさえいた。

図書室でいつまでも大きな声を出してはいられないから、いったん外へ連れ出そうと考えていたのに……。

もしかして北川は加奈ごと、それすらも諦めたんだろうか。

今ここで追ってこないことが、僕に、水族館での決意を教えるためなんだろうか。

でも、だったらだったでどうして、あんな言い草をしたんだろう。

あんな風に加奈を彼女扱いしたままの言い方じゃ、諦めたって僕に悟らせるのは難しくなってしまうだろうに。

おかしい。納得できない。

なんだかいろんなところで微妙に合点がいかない。

そんな考え事をしていたせいか、僕が走るのをやめたのは、

図書室から一番遠い職員棟を抜けた、上靴で出ていける限界、自転車小屋への渡り廊下だった。
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