Garnet~大好きの伝え方
僕とわずかにうつむいている彼女の距離は、三十センチあるか、ないか。

その距離が、この構図が、彼女の声が、

(くそ。夢とかぶる)

そんなことになったら、僕は、自己嫌悪で潰れてしまう。

そう僕は、加奈の彼氏には、なれない。

だから、

「私、ヨシともっと」

「離せよッ!」

思わず、叫んでしまっていた。

彼女の手を、払いのけてしまっていた。

そして、

「……」

加奈の、傷ついた顔。

震える目。

伏せられる顔。

胸の前で握られる手。

「ご、ごめ」

と、彼女が、僕じゃなく、なぜか彼女が謝りきる前に、

「やっぱ帰れ」

ぴしゃりとドアを指差した。

やっていられない。こんな空間、こんな僕、やっていられない。

「でもヨシ、私」

「帰れッ!」

自分でも、めちゃくちゃ言ってると思った。

だけどもうやっぱりこれ以上、同じ空間にいるのは、無理だった。
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