トールサイズ女子の恋【改稿】
 藍山駅に着くまで音楽を聴くのが日課になっていて、バッグの中から音楽プレーヤーを取り出してイヤホンを耳につける。

 今日は静かな楽曲という気分じゃなく、女性ヴォーカルの伸びやかな声、歌詞も女性がある男性に恋をして日々が華やかになっていく雰囲気の楽曲にしてみた。

 電車から見える景色を眺めながら、その楽曲の雰囲気に浸る。

 今までの恋は卒業して、新しい恋に進もう…、か。

 私なんて失恋ばかりだし、いつか身長コンプレックスのことを卒業することが出来るのだろうか。

 恋をしようと思っても悪い方の結末ばかりを浮かんじゃって、良い結末なんて想像がつかない。

『俺がそうしたいんだ』
『星野さんに喜んでもらうように頑張ろうかな』

 ふと水瀬編集長の真剣な表情や、照れた表情が浮かんだ。

「いやいやいや…」

 水瀬編集長はお洒落で誰にも優しいし、周りの女子社員も夢中になる位だし、絶対にモテる人だもの。

 今日のランチもお礼の1つで行くだけだし、深い意味なんて無い、無いけど…、この日の外でのランチの為に洋服のコーディネートを選んでいる時は楽しかったし、寝る時間が少なくなる程だった。

 今聴いている楽曲のような気分でいたのは本当で、水瀬編集長と出会ってから私の中で何かが変わってきてるのかな。

 でもそれが何なのかはまだよく分からなくて、霧がかかるようにもやっとした。
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