トールサイズ女子の恋【改稿】
 在庫室の掃除を終えて総務課に戻ると課長が私を手招きしたので、課長の側にいく。

「週末の金曜日の夜に青木印刷会社と接待になったから、同席をしてくれないかな?さっき営業部の人に星野さんと青木印刷会社とのことを話したらさ、うちと向こうで共通点があるのは心強いし話題も事欠けないよ。これも社会人の付き合いだと思ってさ、お願いできるかな?」

 以前いた職場との接待か…、退職したとはいえ青木印刷会社の人たちにはお世話になっていたのは事実なので、ここで断りをしたら駄目だよね。

「分かりました、お受けします」
「良かった!後で営業部にも伝えるね」

 私は席に戻って浮かんだのは青木印刷会社の人と元彼のことで、総務課の人たちには元彼がいますだなんて口が割けても言えないし、接待でもポロっと元彼のことを言わないように気をつけなきゃ。

 それに今は仕事中なのでそんなことを考えていたらまたミスをしでかしちゃうから、邪念を振り払うように顔を横に振り、備品を発注するファイルを作って送信ボタンを押す前に木村さんに一声かける。

「木村さん、金額の確認をお願いします」
「うん」

 私が使っているパソコンのモニターを木村さんが覗き込み、画面をじぃっと見る。

 これ以上経理課の部長に迷惑をかけたり、備品の発注する仕事を続けさせてくれた課長の厚意を無駄にしたくない。

「数字も桁数も大丈夫だね、これなら送信してもいいよ」
「確認していただいて、ありがとうございます」

 マウスを使って送信ボタンを押し、備品の発注の仕事は完了したから、次は資料作りだ。

 私は女性社員のサポートとして分厚いファイルを使いながら資料を作ることで1日を終えたんだけど、水瀬編集長の温もりは1日だけじゃ消えずにいた。
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