トールサイズ女子の恋【改稿】
「泣いて、すいま…せ…」
「ほら、そんなに泣いたら折角の可愛い顔が台無しだよ」
「ありが…とう、ございま…す」
「………」

 高坂専務がスーツの内ポケットからハンカチを差し出し、私はハンカチを受け取って目元を拭っていると、姫川編集長はずっと黙りながらスマホを弄っている。

「水瀬はあんたのことをからかってないよ」
「どうして、そう言いきれるんですか?」
「それは水瀬に聞いて」

 仁さんは私に顔を向けてきっぱりと言うと三斗さんにグラスを差し出し、三斗さんはグラスに琥珀色のお酒を注ぎ、仁さんはまたグイっと飲み干してグラスをカウンターに置くと、さっきから黙ってスマホを弄っていた姫川編集長が口を開く。

「水瀬から返事がきた。まだ四つ葉出版社にいて、このまま会議室に泊まるってよ」
「丁度いいじゃん。星野さん、今から行ってきなよ」
「でも……」

 水瀬編集長に聞いてや行ってきなってハイレベルな注文で、在庫室で思いっきり突き飛ばしちゃったし…、聞いたところで私をどんな風にみてるか聞くのが恐い。

 それでも高坂専務は背中を押すように、私を水瀬編集長のところに行かせようとする。

「大丈夫。美空ちゃん、今はすごくツイてるし」
「三斗さん、それってどういう意味ですか?」
「んー、仁に会えたからかな」
「またかよ……」

 仁さんはとてもうんざりとした感じでいるんだけれど、会えたからツイてるって、まるで仁さんが幸運アイテムみたいな言い方みたい。
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