キスマーク



「無理に、とは言わない。気が進まなければ、勿論断ってくれても構わないよ」


そう言って、私が淹れたコーヒーに口をつける常務に、



「いえ―…私で良ければ」



と、答える。



「勿論だよ。じゃあ、早速こっちで日時を決めさせてもらってもいいかな?」


「はい。お願いします」



とりあえず会って食事という事が決まり、常務も「良かった、良かった」と既に縁談が決まったかのように上機嫌。



「では、失礼致します」



頭を下げ、部屋を出る私。


吸殻が溜まった灰皿を持って、再び給湯室へと歩く。



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