ダイス



紗江子は気を取り直して頭を上げ、事の全てを説明した。


いや、全てではない。


明良とそういった関係になったこと、自分の気持ちは省いて説明した。


何を怖がっているのか。


刑事でいられなくなるかもしれないことか、それとも彼らに軽蔑されたくないのか。


自分でも分からないが、ただ口には出来なかった。



「……そうか」



深水は黙って紗江子の話を聞き終えたあと、ぽつりと言った。


「報告遅くなったこと、本当に申し訳ありませんでした。どんな処遇でもお受けします」


紗江子はそう言ってもう一度頭を下げた。


「いや、それはいい。俺も言わなきゃいけないことがある」


深水は言いながら、広がった捜査資料を纏めた。


それに今度は紗江子が不思議そうな顔をする。




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