ダイス
隠れんぼなんて、身近な程見付からないもの。



「次に新井から連絡があったら、会う約束をして欲しい」


深水が言うと、雪音は小さく頷いた。


最初からこうすればよかったものを、しなかったのは彼女を利用したくなかったから。


それとその作戦が上手くいくとも限らないから。


新井に戸籍がない以上、逮捕令状は取れない。


そもそもそれだけの証拠もない。


新井を確保しても、任意で同行を求めることしか出来ないのだ。


法的に令状を取る方法はあるのかもしれないが、時間が掛かるだろう。


「……もし、なかったら?」


ないほうを願っているのか。


俯いた雪音からその感情を読み取ることは出来ない。


「そうしたら、別の方法を考えるまでだ」


どうにかしてでも、彼を確保する。


そのあとのことはどうなるかは分からない。


戸籍がないから逮捕出来ないかもしれないし、証拠不十分で起訴出来ないかもしれない。


でもそんなことは二の次で、自分達のやることではない。


やるべきことは新井太一の確保だ。



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