ダイス



賽子だけを写したものを見ると、それが木で作られているというのがよく分かったし、書いてもあった。


資材現場などにある木片から作られたようで、目は黒と赤の油性ペンで塗られている。


だがその目の部分も丸く彫られているということだ。


「現物を見ることって可能ですか? 過去のも今回のも」


その二つは写真を見る限り同じような造りには見える。


だが実物を見れば、何かしらの違いがあるかもしれない。


「見れるとは思うが、明日になるだろ。今必死で指紋や皮脂を出そうとしてるからさ」


深水は紗江子の目を見ながら言った。


この目に見詰められたいと思っていたのはそう遠い昔ではない。


今も、それと似た感情があるのは確かだ。



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