ダイス



「一から……いや、ゼロから考え直しですね」


紘奈が深水の隣に腰を下ろしながら言った。


そうだ、これはゼロからなのだ。


過去と今を繋げるのではない。


まっさらの状態で向き合うしかない。


「一度、賽子から離れてみるか?」


深水が賽子の入った袋を自分から遠ざけながら言った。


離れてみるのは悪くないかもしれない。


「でも、これを切り離すことは出来ないと思います」


紗江子は今の考えを口にした。


この賽子に何の意味もないとは思えない。


「それもそうだな」


深水はそう言い、今度は賽子を近付けた。








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