ダイス




足音は次第に近付き、追い抜いていく。


……そう思っていた。


紗江子はすっかり油断をし、後ろから迫る足音など気にもせずにマンションへの道を進んだ。


捜査本部が本庁で助かった。


離れた所轄などに帳場が立ったりしたら、女子寮に身を寄せることになってしまう。


頭の中にはそのことと、賽子の映像だけが浮かんでいる。


残虐に殺された遺体の傍に転がった賽子。


……転がった?


いや……違う。


おかしい、そう思った通りのは賽子についてではなく、足音にだった。


そう思った時、足音は直ぐ後ろにきていた。



そして、そこで音が止んだ。




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