冷たいアナタの愛し方
始終オリビアについて回るシルバーに違和感を拭えないジェラールは、馬房内を掃除するオリビアを手伝いもせずに腕組みをして眺めながら尋ねる。


「その犬みたいな魔物は俺が預かってる。何故お前にそんなに懐くんだ」


「私昔から動物によく懐かれるの。この犬…あなたの預かりものなの?誰から預かってるの?」


オリビアが干し草を集めながらしらばっくれてみると、ジェラールはぐるぐる回られてきらきらした目で遊んでと訴えてくるシルバーの目尻を撫でてやりつつ鼻を鳴らす。


「お前に関係ない。とにかくこいつにあまり構うな。いずれ返さないといけないんだからな」


「あっそう。シルバー、私、お前に構っちゃいけないんですって。だからちょっと離れててね」


利発そうに真っ直ぐ立った耳がぴくっと動き、直後猛烈な抗議をすると言わんばかりに吠えてまくし立てるシルバーは牙を剥き出して襲いかからんとする。

オリビアとしては芝居だが、シルバーは違う。

主から離れる気など毛頭ない天狼は、身を低くしてジェラールに飛びかかる寸前で、慌てたオリビアは両手でぱんっと音を立ててシルバーの気を引いた。


「その人は食べちゃ駄目!お前は誰かの預かりものなんでしょ?それまではちゃんとお世話してあげるから。ね?」


「きゅうん……」


オリビアに身体を擦りつけるシルバーを脇に座らせて掃除を再開したオリビアは、ジェラールを軽く睨んで同じように鼻を鳴らした。


「シルバーが勝手に私に懐いてるんだからどうしようもないわよ。それよりあなたはあの酒樽に襲われないように離宮に閉じ籠もってた方がいいんじゃないかしら、ジェラール坊ちゃん」


「…ふざけた口を利くな」


そう言いながらもオリビアが干し草を集めるために前かがみになった時、ばっちりスカートの中が見えてしまって目を逸らせなくなったジェラールは――逆に後方に反り返りつつじっくり観察してシルバーに唸られた。


「?どうしたのシルバー」


「がうがうっ。うわんわんわんっ」


耳を倒して怒るシルバーは勇敢なるボディーガード。

ジェラールとしてはもう顔も声もあまり思い出せないあの少女にシルバーを返さなくてはいけないので、どうしたものかと肩で息をつきながら、シルバーの隙を見てまた観察を再開した。
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