冷たいアナタの愛し方
その頃ルーサーは、密かに頭を抱えていた。


…何しろ蛮族の長であるガゼルと、東のハルヴァニア王国の双方から手紙が届けられて、双方から近々ガレリアを訪れると書いてあったからだ。

ガゼルはともかく、ハルヴァニアは――脅威。

ハルヴァニアとガレリアの間には境界線があり、検問所もある。

そこを通れば、ハルヴァニアの広大な森林地帯にすぐさま囲まれて、王都に着くまで馬で数日かかった挙句、魔物に襲われる危険性もある。

故に国境を越えようとするものは少なく、またハルヴァニアの現在の若き王は――ガレリアに戦を仕掛けてくるかもしれないという噂話も絶えない国だ。


「王自ら出向いてくるとはね。僕の手紙の内容じゃ満足しなかったってことか…」


ローレンを攻めたのはウェルシュの身勝手な行動、と書いた手紙の返事がこれなので、納得はしていないのだろう。

ましてやこちらにはジェラールの命を狙ったかもしれないウェルシュが居るし、あの酒樽が近々王位継承式を行ってしまうのだ。

そうなれば…先に仕掛けてくるのはこちらか、あちらか――


「ああ…頭が痛い…」


こういう時は、心が和むものに触りたいし、会いたくなる。

ルーサーは手紙を机の引き出しに入れて離宮を出ると、ジェラールの元を訪れて外からこっそり窓を覗いてみた。


1階にジェラールの姿はなく、ソファには――シルバーに頬をぺろぺろ舐めまくられつつも微動だにせずにぼんやりしているオリビアが座っていた。

…男女がひとつの家で共に住むということがどういうことだかはもちろん知っているが――ジェラールにはオリビアのような毅然とした女性が似合うと思っていたので、それに今も異存はない。

異存はないが…


頬をかきながらドアをノックすると、窓からルーサーを確認したオリビアがすぐさまドアを開けて顔を輝かせる。


「ルーサー!居なくなったから心配してたのに」


「ちょっと用があってね。で、どうなった?」


問うと、オリビアはルーサーを中へ入れつつ真っ赤な唇を尖らせて視線を落とす。


「…私…ここに住むことにしたわ」


――とりあえずは、これでいい。

そう、と返したルーサーは、オリビアの細い肩を叩いた後2階へ上がった。
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