冷たいアナタの愛し方
「じゃあ城に行こう。多分母と同じサイズだと思うから合うはず」


「え…お母様の?でも…大切な形見なんじゃ…」


「うちには姉も妹も居ないし、確かに形見だけど誰かに着てもらった方が嬉しいと思うし。優しい人だったから絶対そう思ってくれるはず」


首輪をつけてもらって上機嫌にスキップ気味に歩いているシルバーの長い毛に指を絡ませながら歩いていたオリビアは、ジェラールの離宮を振り返るとため息をついた。


「どうして私がコロシアムに行くのを許してもらえなかったの?」


「ああ…まああそこは…レディーが行くような場所じゃないしね。それにちょっと危険だから」


「?そうなの?単なる闘技場でしょ?」


「そうだけど…まあ行ってみればわかるよ」


城に通じる扉の鍵を開けて緩やかなスロープを上り、それがまたかなり上の方だったのでオリビアが息を切らし始めた時、ルーサーは回廊の方へと出て靴音を響かせながら笑った。


「ドレスを着るのは久しぶりなんじゃないかな。楽しみ?」


「そうね、でも私どっちかと言えばじゃじゃ馬だったから裾の長いドレスは好きじゃなかったわ。でも今は着たいの。久しぶりだから」


「好きなのを選ぶといいよ。あとレティって言ったっけ?呼んでおくからメイクもしてもらったらいいよ」


「!ありがとう、ルーサー!」


オリビアにはルーサーの金色の髪が眩しくて、笑顔も眩しくて…気を緩めているとうっかり見惚れそうになってしまう。

赤絨毯に視線を落として歩いて、とある部屋の前で立ち止まってドアを開けると――


「…えっ!?この部屋ひとつ丸々…衣裳部屋なの!?」


「王妃なんだからこれ位持ってるのは普通だよ。じゃあ僕はレティを呼んでくるからゆっくり選んでて」


ルーサーが部屋を出て行き、所狭しと並べられているドレスの山の前で立ち尽くしたオリビアは、目がちかちかしてくらくらしてしまった。
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